2015年12月28日月曜日

メタ認知療法の私的まとめ⑪ 大うつ病性障害のメタ認知モデル その1

大うつ病性障害のメタ認知モデル・メタ認知療法
焦点:患者が反芻の原因を理解し,この無益な処理を取り除くこと。
ネガティブな思考,悲嘆,喪失体験 → 反芻(=CASの重要な特徴)
CAS → 悲嘆とネガティブな信念が持続 → 抑うつエピソードに。


2015年12月20日日曜日

メタ認知療法の私的まとめ ⑩メタ認知療法の目的

メタ認知療法の基礎=S-REFモデル

メタ認知モデルが明らかにしたこと:一定のパターンで考えることthinking=CASの結果,心理的障害が発生
CAS=メタ認知が,評価と対処に行うコントロールから生じる。
メタ認知=内的な思考および感情feelingsに関する情報,対処と考えることthinkingの性質をコントロールする方略
メタ認知的知識ベース=高度に手続き化された,認知をコントロールするプランやプログラム


2015年12月18日金曜日

メタ認知療法についての私的まとめ⑨ プロセス焦点的なセラピーと内容焦点的なセラピー

既存のCBT=内容焦点的。セラピストは,思考と信念の内容(e.g., 社会,身体,世界等の領域)を話題にし,扱う。
MCT=プロセス焦点的。内容を扱うのはメタ認知領域の場合。

例.抑うつの場合
CBTのセラピスト=自己,世界,将来についてのネガティブな思考と信念の根拠を尋ねる。
 「あなたの認知の歪みは何ですか?」,「反証は何ですか?」
MCTのセラピスト=メタ認知レベルで介入。目的=反すうの低減,反すうについてのポジティブ/ネガティブな信念の修正。
 「反芻するのを先延ばしできますか?」,「そのことを長々と考える利点は何ですか?」


2015年12月17日木曜日

項目分析 項目困難度について

CTTにおける項目困難度(正答率)=項目の難易度を表す最も基本的指標。
項目分析の文脈では,通過率(passing rate)と呼ばれることも。

確認すること 作問時に想定した難易度になっているか。項目内容から考えて妥当な結果になっているか。


2015年12月16日水曜日

項目分析の目的

項目分析=テストデータから,視覚化や数値要約によって各項目の特徴を把握し,テストに含めるか判断すること。
IRT適用の前に行われる。

各項目の内容を吟味(内容的・表面的妥当性や出題内容・選択肢の誤り,不適当な言葉・言い回し)
 ↓
データに基づき,各項目で以下を統計的に判断。テスト作成で必要な作業。
(a)そのままテストに含める
(b)より適切に改善する
(c)不適当なので廃棄する(IRTの文脈では以降の分析から除外)=項目分析の主目的。
#どういう場合に不適当な項目と判断されるのか。それはなぜか。そのためにどのような受験者集団が必要か。


2015年12月11日金曜日

「有機体(生活体)と環境の相互作用」とは

行動分析では,しばしば,「有機体(生活体)と環境の相互作用」と言われます。
しかし,私自身,このことの理解があやふやでした。

先日,以下の書籍を読み,それが,「有機体(生活体)と環境との双方向の作用」
を意味していると分かりました。特に,「環境→有機体(生活体)」の方向という
視点は,見落とされやすく,しかし介入を行う上で有用です。


2015年12月4日金曜日

検定力について

第1種の誤り 帰無仮説が正しいときにそれを棄却する誤り。
帰無仮説通りの母集団から無作為抽出を行ったときに,帰無仮説を棄却してしまうような偏った標本が得られること。その確率は有意水準αとしてコントロールされる。

2015年9月23日水曜日

論文に誤りがありました。


Thought Control Questionnaireの日本語版を開発した下記の論文に誤りがありました。

義田俊之・中村知靖 (2014). Thought Control Questionnaire日本語版の開発 ―信頼性・妥当性の検討― 応用心理学研究, 39, 236-245


2015年9月14日月曜日

CTTおよびIRTにおける測定の精度

テストは,受験者の何らかの特性値を推定するために行われますが,そこには誤差がつきもの。

2015年9月9日水曜日

メタ認知療法についての私的まとめ⑧ 改訂版ABCモデル

メタ認知モデルを理解し,認知行動理論とどのような関係にあるのかを見極めるためには,
メタ認知モデルが標準的なA-B-Cモデルをどのように変えたのか検証すればよい。

2015年9月7日月曜日

メタ認知療法についての私的まとめ⑦ ポジティブなメタ認知的信念とネガティブなメタ認知的信念

CASをコントロール(i.e., これら処理操作を行わせたり,それを評価したり)するのは,思考過程についての誤った信念(=メタ認知的信念)
内容領域(=CASに対する意味付け)で2つに分類 (1)ポジティブなメタ認知的信念,(2)ネガティブなメタ認知的信念

2015年8月31日月曜日

メタ認知療法についての私的まとめ⑥ メタ認知モデルの要約

MCTの基礎にある原則:精神障害が持続する理由は,一定の状態の思考過程(=CAS)が,
情動的経験と知識に影響を与えるから。
CASは,特有のパスを通して,ネガティブな自己感と脅威の知覚を維持。

2015年8月30日日曜日

メタ認知療法についての私的まとめ⑤ Cognitive-Attentional Syndrome(CAS)の帰結

CASの何がまずいのか?

①評価と対処行動が信念に与える効果(Fig1.1の矢印A)
e.g., 脅威に注意を焦点化→「危険が存在する」という信念を強める。
不安を回避→「情動は中立無害」という真実に至れない。

②思考スタイルと対処が,下位レベルの自動的処理過程および情動レベルの処理過程
に与える効果(Fig1.1の矢印B)
e.g., 心配→不安のネットワークの活性化を維持→侵入イメージの処理から注意が逸れるため,
感情処理が阻害される

③メタシステムの知識と,下位レベルとの,直接の(#CASを介さない)関係(Fig1.1の矢印C)
e.g., ある種の自動的処理→後続の処理をガイドする知識,プランの検索をプライム

より詳しく

2015年8月29日土曜日

メタ認知療法についての私的まとめ④ Cognitive-Attentional Syndrome(CAS)

Cognitive-Attentional Syndrome(CAS)について詳しく説明。

精神障害を持つ人の思考パターンの性質:繰り返され,陰鬱。
自己関連のトピックに焦点化。制御困難。
→CASの兆候。自己注目の高まりが特徴。

2015年8月25日火曜日

メタ認知療法についての私的まとめ③ 「精神障害のメタ認知モデル」

self-reguratory executive functionモデル(S-REF; Wells & Matthews, 1994, 1996; Wells, 2000)を詳述。
感情障害がトップダウンコントロールによって維持されることを認知的,メタ認知的に説明

認知的プロセスが,相互作用する3つのレベルに渡って存在すると想定。
①低次処理過程(自動的で反射的な処理過程)
②認知スタイル(オンラインの過程。思考と行動を意識的に処理)
③メタシステム(メタ認知的知識・信念のライブラリー。長期記憶に貯蔵)

2015年8月20日木曜日

メタ認知概念の整理

第1章「はじめに」を要約する。

メタ認知とは,自分自身の思考や認知についての思考(Flavell, 1979)。
単一の概念ではなく,多面的なmulti-faceted概念。
3つの側面:メタ認知的知識,メタ認知的モニタリング,メタ認知的コントロール

表1.1 メタ認知に関する重要概念の定義
概念定義日常の例
認知象徴的な心的活動と心的表象学習,問題解決,推論,記憶
メタ認知ほかの認知についての認知
メタ認知的知識ある種の認知についての宣言的知識
言葉で述べることができる,認知についての事実や信念
人一般についての場合も,個人に個別的な場合も
誤った信念を含むこともある。
#宣言的知識だけ?手続き的知識もでは?
・学習がどのように機能するかについての知識
・学習を改善する方法についての知識
・「多くの場合,イメージを使って単語リストを学習する人は
 そうでない人よりたくさん覚えている」,「私は数独が苦手」
・長年の研究で分散学習の有効性が示されているのに,
 多くの学生は,試験前の一夜漬けの効能を信じる。
メタ認知的モニタリング認知活動の現在の状態を査定すること
#査定は正確な場合も不正確な場合もある
・問題の正しい解決に近づいているかどうかを判断する
・読んでいることをどれほどよく理解しているかを査定する
メタ認知的コントロール認知活動のある側面を調整すること
#認知活動を中断したり,続けると判断したり,
 途中でそれを変更したりする
・難しい問題を解くのに新しい方策を使うことに決める
・雑学的知識問題の答えを思い出そうとさらに時間をかけることにする
・単純リハーサルの反復を止め,語呂合わせに切り替える。

これら諸概念を,それぞれ単独ででなく,相互に関連させて理解するのに有用なのが,
Nelson & Narens(1990)のメタ認知と認知の関係についての一般的枠組み。

2015年8月13日木曜日

メタ認知療法についての私的まとめ③

「メタ認知療法」第1章「メタ認知療法の理論と特質」の「メタ認知の性質」

メタ認知の性質
メタ認知の研究:発達心理学→記憶の心理学,加齢と神経心理学の研究という流れ。
近年,Wellsはこれを精神障害の基盤として検討。

メタ認知という言葉が記述すること:認知の解釈,モニタリング,制御に関与する
あらゆる知識または認知過程(これらは相互に関連しあう)
→知識,経験,方略に分けられる。

2015年8月7日金曜日

メタ認知療法についての私的まとめ②

「メタ認知療法」 第1章 メタ認知療法の理論と特質
(今回は「メタ認知の性質」の前まで)

誰もがネガティブな思考を持つ
思考をコントロールし,心の健全な制御(そうした思考を無視できる)と,
不健全な制御(より長く深い苦悩に沈みこむ)を分けるのは何か?
本書の主張:メタ認知。感情と感情に対する制御力を決定するのは,
人が何を考えるか(What)だけでなく,どう考えるか(How)。

2015年7月31日金曜日

メタ認知療法についての私的まとめ①

Metacognitive Therapy for Anxiety and Depression(英語版)(日本語版)のPrefaceを
まとめてみました。(#は私なりのコメントです)

#メタ認知療法とは,従来の認知療法のように「何を考えるか」という観点からでなく,
「どのように考えるか」という観点から,不安障害と気分障害の維持を考察し,
介入する新しい認知療法です。

認知の重要性
思考が感情と心理面のウェルビーイングに影響を及ぼす。
#従来の認知療法を踏まえている。

MCTの中心的前提:精神障害は,思考がどの程度持続・反復するか
(裏を返せばどの程度一過性か)による=思考スタイルの選択とコントロールのプロセス。
規定するのはメタ認知(=自身の内的経験にどのように関与するか)。

CTとMCTの違い

従来の認知行動理論MCT
焦点偏った思考の内容思考の反復,持続の程度。陰鬱で制御困難。
無益な思考パターンの
原因への関心
なし(強いて言えばネガティブな信念)あり。メタ認知。
自身の思考とどのような関係を持つか(つき合うか)。
感情的苦痛の中心自動思考精神的プロセスの制御,持続する思考に対する考え方の選択
(CAS;無益な,心配/反芻のプロセスおよび精神的制御の方略)

メタ認知理論の提案:思考と情動の障害の原因となるメタ認知は,
従来のCBTで強調されてきた他の思考や信念とは別個のものである。