2010年9月28日火曜日

日本心理学会第74回大会後記

日本心理学会第74回大会,参加してきました。

発表が初日の午前中だったので,前泊しました。
夕食は,高校時代の友人と,ジャンジャン横町で串揚げなど頬張りました。
初日
例年注目しているある方の発表を聞きにいって参りました。
ポスター脇でちょっと情報交換。やはり似たようなところで似たような課題を
感じているよう。
あの先生が私のポスターに来てくださいました!!
思考コントロール方略を研究する意義について,私なりの考えを説明しました。
「侵入思考とどう付き合ったらよいか」というのは,認知行動療法の介入技法の
面では提言されている(カラム法はその代表例)。
しかし,基礎理論の面で,「侵入思考とどう付き合っているか」の概念化も,
測定手法もない。つまり,理論と技法とが不一致。
そこで,思考コントロール方略について研究することは,この不一致を解消する
上で意義がある,というようなことを申し上げました。
先生は「ああ,そうだよね」と言ってくださって。
この説明の仕方はちょっといいかもしれない,と思えました。
��当日発表しました内容については,昨年度の紀要にまとめております。
興味がおありの方は,メールフォームからご連絡ください)
お隣のポスターが,その先生の学生さんだったので,そして,抑うつと自己意識
がらみの発表だったので,お話を伺いました。
少しは気の利いたコメントができたでしょうか。
それから,思ってもみなかった職域の方が私のポスターにお越しになりました。
「自分たちの職能を,職人芸で終わらせず,後代にかたちとして残すために
どうしたらいか,参考にしようと思って」と。
私の発表がお役に立つのであれば,是非ともご活用いただきたい。
発表が終わって少し気が抜けて,昼から先輩と麦のジュースで喉を潤しました。
一仕事終わると,やっぱりおいしいですねえ。
二日目
統合失調(症)のシンポを聞きに行きました。
基礎研究,アセスメント,介入などいろいろな立場の方からのご発表でした。
ひとつのテーマに対して複数のアプローチがあるからいいんだよねえ。
阪大の精神科の先生が漏らされた,心理士への不満が痛かったです。
「患者の服薬アドヒアランスを高める介入」を心理士にやってほしい,
ということなんですね。
服薬も行動なので,その生起頻度に関わる要因を特定したり,介入したりする
ことに,行動科学の知識や手法を使えるはずです。
「臨床実践と心理学研究の対話」
松見淳子先生のお話は逐一頷けるものばかりでした。
介入の効果研究が進展する今日,心理士に必要なのは
・実験心理学の理解,アセスメントツールや統計の知識,
・介入技法の体得,英語の研究論文の読解能力,
などだと思います。
臨床現場から研究へ来られた先生のお話。自分にも似ているところがありました。
臨床の人と話すときと,研究をして論文を書くときとでは,「コトバ」の使い方
が全然違うのですよ。そこに正面から取り組んでおられて,好感が持てました。
きっと大変だと思うのですが,実のある大変さなので,ぜひ頑張ってほしい。
懇親会への移動のバスの中では,駆け出しの時からお世話になっている先生に,
私の論文についてコメントをいただけました。
お褒めのコトバとしては,
・「問題と目的」で述べているモデルは,臨床の実感と一致している。
・ポジティブな自動思考はネガティブな自動思考を抑制しないというのも,
実情に合致している。
厳しいコトバとしては,
・同一時点で収集したデータなのにパス図を描いたら因果関係に言及できるって,
どうして?
懇親会 
一度お話をうかがいたかった先生方にご挨拶。
他の方とお話していらっしゃる切れ間を狙うということで,合コンみたいだった。
興味のある先生に対しては,どういう道を辿って今日に至っておられるのかを
聞きたくなってしまう。
ある先生は,研究でお名前を拝見していたのだけれど,
大変そうな患者さんを診ておられて,ケースの話でちょっと盛り上がりました。
もっとケースの話などしたかった。またの機会を狙います。
もうお一人の先生は,医学部の中で心理学者としての地歩を築いていらっしゃる。
研究しないと賢くなれないし,研究やるには物事を手際よくこなさないと いけないし。
しかも,周囲に心理(学者)がいない状況で研究するって大変だと 思う。
��心理学者としてのアイデンティティが確認できるから,日心の大会に参加
するっておっしゃってた)
水曜日は仕事の都合で参加がかないませんでした。
認知療法学会まで行くと1週間も家を空けることになるので,憚られました。
両方参加された方もちらほらいらっしゃったようで,私も行きたかった。
来年の大会は日大,再来年は専修大だそうです。
日心の雰囲気は好きなので,毎年発表をしながら参加を続けています。
学会を運営してこられた諸先輩方,今回の大会運営をされた阪大の皆様に感謝。
学会の大会に参加すると,短期間で知識の整理ができるし,ふだんなら知り合え
ない方とも知り合えるので,密度の高い時間を過ごすことができます。
今年は,行動療法学会@名古屋に参加します。ひつまぶし食べたいー。
「臨床的なテーマに,行動科学的な手法で迫る」という考え方に同意して
いただ ける方は,拍手をお願いします。

2010年9月15日水曜日

日本心理学会第74回大会でポスター発表します。

このブログをご覧いただいている方の中には,
心理学関係の方もいらっしゃると思います。

20日(月)の午前中に,「障害・臨床」のセクションで,思考コントロール方略
に関するポスター発表をします。
不安・抑うつに対する認知的アプローチ,侵入思考,思考抑制,反すうなどを
研究していらっしゃる方に興味を持っていただけると思います。
ぜひぜひお越しください。
私と研究上の関心を同じくする人たちのポスター発表を聞きに行くのはもちろん,
まったく関係がない研究のポスター発表の中に興味をそそられるものが
ときどきあるので,ポスター会場をぶらぶらしてみたりします。
ワークショップ,小講演は認知行動療法関係と構造方程式モデリング関係の
ものに参加してみようと考えています。
日心の大会は,研究の知見にしても方法論にしても,
かなり新鮮なものが聞けるので,毎年楽しみです。
21日(火)いっぱい大会に参加して,9時半ごろに大阪を離れる予定です。
現在,ポスターを作製中です。
去年から,この本を参考にしてポスターを作るようにしています。
紙面に何でも書き込み,ごちゃごちゃさせてしまう悪い癖が私にはあるので,
ポスターをなるべく簡潔にしようとしています。
すっきりしたきれいなポスターで,かっこよく発表したいなあ。

2010年9月8日水曜日

I am pleased to inform you だそうです。

3ヵ月前に出会った,regrettablyという忌まわしき言葉。
その後,気持ちを切り替え,ジャーナルを変えて再投稿をしました。

そして,先日,その査読の結果が届きました。
今回は,楽しい昼ご飯を食べようとしているときでした。
予想より早かったので,ひょっとしてまたも忌まわしき言葉を
目にしなくてはならないのでは,などと弱気になったのですが。
I am pleased to inform you …と書いてあったのを見て救われました。
「適切な改訂を行ったら受理します」といった旨のことが書かれていました。
今は,嬉しいというより,ほっとしたという感じです。
査読者のお二人,いろいろ言ってきてます。
もちろん,きっちり直していきますよ。
「改訂した原稿を投稿しても,また査読があるので,受理を保証する
ものではありません」みたいな断り書きがしっかりしてあります。
ここでしくじったら元も子もない。
しっかし,明るい気分で改稿に取り掛かれるのはいい。
今年(今年度?)の前半は思うに任せないことがいろいろあって,
正直苦しかったのですが,腐らずにやってきてよかった。
この論文に関わって,バックアップしてくださった皆さんに感謝申し上げます。
それから,同じ時期に,近いテーマで,類似のジャーナルに投稿してこられた
先生方にも感謝したい。皆さん一筋縄ではいかない様子だったけれど,
タフに取り組んでおられる様子から,私も励まされました。
受理になる先生も出てきたようなので,私も後に続きたいものです。
そしてやっぱり,一番感謝したいのは,うちの相方です。
苦しい時にしっかり叱咤激励してくれたし,今回も喜んでくれました。
おかげで私も少しはタフになったと思う。
英文誌はどこもcompetitiveなんだと思います。
「投稿されてくる論文の数があまりに多いから,なるべく落としてほしい」
という要望が編集委員会から査読者にあるのではないだろうか。
そういった状況で論文を受理に持っていくためには,手堅くまとめられている
だけでなく,何かひとつ,光るものが必要だということを学びました。
いつも目線を高く持たないとね。
他にも,投稿したい原稿がいくつか手元にある。勢いに乗って出していこう。