2015年9月9日水曜日

メタ認知療法についての私的まとめ⑧ 改訂版ABCモデル

メタ認知モデルを理解し,認知行動理論とどのような関係にあるのかを見極めるためには,
メタ認知モデルが標準的なA-B-Cモデルをどのように変えたのか検証すればよい。



標準的なA-B-Cモデル:activating event(A)→スキーマ・不合理な信念の活性化(B)
                                    →情動および行動面の帰結(C)。

未解決の問題
・通常のネガティブな評価や信念を,執拗な(#しつこい)思考と情動に結び付けるのは何か?
・心理的苦悩に典型的な(#つきものの),制御困難な思考パターンを生じているのはいったい何か?
#これらの問いに対して,メタ認知モデルが答えを提供する。

メタ認知理論はA-B-Cモデルのどこを改訂したか
・真ん中の要素が,メタ認知的信念に置き換わった(#A-B-Cモデルでは,
真ん中は通常の認知領域(e.g., 自己や世界)に関する信念)
・activating eventが,内的経験(ネガティブな思考や,通常の信念)に置き換わった。
(#A-B-Cモデルでは,activating eventは外的事象)
⇒A-M-Cモデル
・標準的なA-B-Cモデルの下流(#右の末端,C)から始まる。
メタ認知モデルにおける先行事象(antecedent,activating event)は,
内部で起きる認知的事象であって,
外的状況でおきる事象ではないから。
・メタ認知モデルにおけるMの要素=メタ認知的信念とCAS。通常のネガティブな評価や信念は,
メタ認知的要素に影響され,使用される。

#全部つなげて書くと,
外的状況で起きる出来事→通常の認知領域のスキーマ・不合理な信念の活性化(B)
                       →メタ認知的信念とCAS(M)→情動・行動面の帰結(C)。

CBTとMCTの違いを事例で明確化。

 30歳女性。MCTを受けるまで2年余り抑うつ的であった。
「仕事を求めて故郷を離れてからの2年,ほとんどの間抑うつ的で自殺のことを考えていた」と語る。
アセスメント時,ずっと一人ぼっちだった,いつも「物事は変わらない」と考えてきた,
その結果,悲しく,無力感と絶望感を感じた。

A-B-Cモデルによる定式化
Antecedent=一人ぼっちであること → Belief=「物事は変わらないだろう」 
                                   → Consequence=悲哀感,無力感

メタ認知アプローチ=メタ認知的信念とCASを探る
セラピスト:自分の気持ちやなぜそう感じるかをどれくらいの時間考えて過ごしたか尋ねる。
クライエント:自問する思考の連鎖「なんで私こうなんだろう?物事なんて変わるのかな?
これってどういう意味なんだろう?なんで私ものごとをやり遂げられないんだろう?
なんで人は私より幸せなんだろう?こういう状態終わるのかな?」

セラピスト:そう考えることにメリットはありますか?
クライエント:①反芻することで物事を変えられる,②悲哀感を経験は動機づけになる。
セラピスト:悲哀感を感じるためにどんなことをしているか。
クライエント:思考と感情に注意を向け,悲しい音楽を聴き,活動量を減らして考える時間を
増やしている。

A-M-Cモデルによる定式化
Antecedent=「一人ぼっちだ」という考え
 → Meta-belief=①物事を変えるには反芻する必要がある,
②悲哀感はモチベーション。
CAS=反芻,悲哀感に集中,悲しい音楽を聴く → Consequence:悲哀感,無力感。

Fig1.4とFig1.5を比較→CBTとMCTの強調点の違いが分かる。
CBT:無力感についての信念に取り組む。
MCT:CASを除去し,CASを支えるメタ認知的信念に取り組む。

A-M-Cモデルでは,トリガーは内的なもの=思考であって,外的な状況ではない。

MCTの性質:長引く情動的苦悩状態に患者をはまり込ませる思考と対処のパターンを
認識してもらい,それらのパターンと,メタ的な信念を変容するセラピー。
自己や世界に関する通常のネガティブな信念の現実性を評価する
(信念を是とする根拠を尋ね,反証を検討する)セラピーではない。
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