2010年12月5日日曜日

侵入思考,スキーマ,思考コントロール方略の関係

先日,今後の研究の枠組みとをある方と話し合っていた折に,
有益な質問がもらえたおかげで,有益な答えを引き出してもらえました。

思考コントロール方略を研究する人間は,思考コントロール方略が
侵入思考を強めたり弱めたりするという立場を取ります。
つまり,思考コントロール方略は侵入思考に影響を与える要因,
もっとざっくり言えば侵入思考に対する原因系の変数だと考えるわけです。
そこでその方が質問されました。
「思考コントロール方略以外に,侵入思考の原因になるものって何ですか?」
「えーっと,えーっと」
侵入思考の原因について,従来の認知療法(Beckに発する,
第二世代の認知療法ですな)は,スキーマであると考えます。
つまり,スキーマという潜在的な認知構造があって,
それが何らかのイベントによってトリガーされ,
活性化されて侵入思考がアウトプットされるという考え方です。
(これについては,丹野先生の解説が分かりやすいので,
そちらを参照されてください)
ここまで答えたところで,「じゃあ,思考コントロール方略とスキーマとは
どのような関係にあるのだ?」という問いが私の頭を過ぎりました。
思考コントロール方略は,スキーマが活性化されてアウトプットされた
侵入思考に対して加えられる処理,あるいは操作であると言えるのです。
つまり,両者は役割が異なります。
まとめれば,
「event→スキーマ→侵入思考→思考コントロール方略→侵入思考」
というプロセスを考えることができるでしょう。
これなら,第二世代認知療法の知見と整合的で,それにつなげながら
議論していくことができます。
もうちょっと早く気がついていれば,紀要に書いたレビューに
この論点も盛り込むことができたのですが。
それから,セラピーのことを考えると,従来の認知療法っていうのは,
スキーマを活性化させて,それを修正することであると言えます。
一方,思考コントロール方略に着目したセラピーというのは,
侵入思考を強める操作を見つけ出して,それを使うのを控えてもらったり,
侵入思考を弱める操作を見つけ出して,それを使うようにしてもらったり
することであると言えるでしょう。
で,「構造を変えることと操作を変えることと,どっちが容易でしょうか?」
という問いを私の方からその方に投げかけたところ,
「操作でしょう」というお答えをもらえました。
(ここでも,まずは操作を変えて安全圏を確保しておいて,
その後で構造を変えることにゆっくり取り組めばいいのではないか,
という,両者を結びつけた議論は可能だと思います)
マインドフルネスっていうのは,思考コントロール方略に影響している
部分もあるのではないか,と思ってみたり。
今日は備忘録的にブログにまとめておいて,いずれは何かにまとめたいと
思います。