2017年3月11日土曜日

【本の紹介】よくわかる心理統計 (ミネルヴァ書房)


山田 剛史, 村井 潤一郎
ミネルヴァ書房 (2004-09)
ISBN:9784623039999
3,024円

 「よくわかる心理統計」は,初学者(ある程度心理学に携わる前の,心理屋のタマゴさん)が心理統計の基礎的な事柄を勉強するのに適した本です。
 その理由は,取り上げられている題材の取り組みやすさと,つまづきやすいポイントを押さえた説明にあると思います。


題材の取り組みやすさ
・学生が親しみやすい変数の内容や名称です(恋愛得点,名義尺度で「好きなコンビニ」としてセブンイレブン,ローソンなどを挙げている)。私も講義で多いに参考にさせていただいています。
・数値例がシンプルなので,手計算,電卓やエクセルで追計算しやすいです。

つまづきやすいポイントを押さえた説明
・初学者がつまづくトピックで,納得のいく解説,端的な図示がなされています(例えば,尺度水準の説明で,等間隔性とはどのようなことか,原点を定めることができることと割り算ができることはどのようにつながっているか)。講義で多いに参考にさせていただいています。
・「標本分布」という難所の,平易かつ丁寧な解説(「標本から母集団を推測しよう」)。同じ母集団(=母数は一定)でも,そこから標本抽出を繰り返すと,標本統計量(例えば平均)がいろいろな値を取ることを,分かりやすく,何度も例示しています。
・「母数・標本統計量・標本統計の実現値」の3点セットのうち,「標本統計量」が,推定という文脈では「推定量」と呼ばれ,検定という文脈では「検定統計量」と呼ばれていることが指摘されています。つまり,文脈によって言い換えられている だけで,「推定量」と「検定統計量」は実は同じであることが分かって,頭がすっきりします(同様に,「標本統計の実現値」も,推定という文脈では「推定値」と呼ばれ,検定という文脈では「標本統計量の実現値」と呼ばれていることも指摘されています)。

 「エピローグ さらにステップアップするために」では,本書で取り上げなかった重要なことがら(例えば因子分析や回帰分析,信頼性と妥当性)を取り上げるとともに,「読書案内」で,複数の書籍を,領域とレベルに分けて,どの順で読んでいけばよいかを明示されており,次の学習への橋渡しが為されています。もうとっくに初学者を過ぎたはずの私も,本書や,読書案内で紹介されている書籍を何度も読んで,足元をしっかり固めたいところです。

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