2010年6月9日水曜日

Thought Control Questionnaireの開発

Wells, A., & Davies, M. I. (1994). The Thought Control Questionnaire:
A measure of individual differences in the control of unwanted thoughts.
Behaviour Research and Therapy, 32, 871-878.

先行研究から,不快で望まない思考(≒侵入思考)は
健常群,臨床群の両方で頻繁に体験されていることが示唆されている。

「侵入思考のコントロール」というときに,無視できないのが
「思考抑制」というテーマ。この思考抑制について,Wellsは

思考抑制は「考えないようにする」という目標によって定義されている。
そのため,どのような方略を用いているのかが不明である。

と述べています。そして,

どのようなコントロール方略がリバウンド効果を生むのかを明らかにするために,
様々なタイプの思考コントロール方略を測定できる質問紙を開発する必要がある。

つまり,同じ目標を追求するにしても,そのための手段(=方略)はいろいろあ
ると考えられるし,手段が違えば結果も違うのではないか,と言いたいようです。

また,そのような質問紙が開発されることで,通常の侵入思考が
どのようにして病理的な思考へ変容するのかをより詳しく調べることが
できるようになるだろう。

つまり,通常の侵入思考が病理的な思考へ変容していく過程に,
ある種の思考コントロール方略が関わっているのではないか,
という着眼点です。

不快で望まない思考に対するコントロール方略をアセスメントする質問紙である
Thought Control Questionnire(TCQ)を開発し,信頼性と妥当性を調べた。


方法と結果
質問項目を作り出すために,臨床群(強迫性障害,全般性不安障害,心気症)
計10名と健常群10名に半構造化面接を行い,望まない思考をコントロールする
方略を描写してもらった。その結果,59項目が収集された。

当初,これらの項目は理論的な観点から7つのカテゴリー
��「認知的気晴らし」, 「行動的気晴らし」,「罰」,「距離を置く/中和化」,「再評価」,
「気分を 変える」,「曝露」に分類された。

その後,項目を選択するために大学(院)生を協力者とした因子分析を二度行った。

一度目の因子分析
251名(18-25歳,男性125名,女性126名)の大学(院)生に回答を求め,因子分析に
より6因子を抽出した。
「行動的気晴らし」,「認知的気晴らし」,「社会的コントロール/保証
希求」,「心配」,「罰」,「再評価」であった。

二度目の因子分析
229名の大学(院)に回答を求めた。認知的気晴らしと行動的気晴らしが同一因子
を構成し,最終的に「気晴らし」,「社会的コントロール」,「心配」,「罰」,
「再評価」の5因子を抽出した。各因子は6項目で構成され,4件法である。

信頼性
内的整合性 αs≧.67
再検査信頼性 6週間の間隔で,rs≧.67 

妥当性
侵入思考,心理的脆弱性に関するさまざまな尺度との相関を調べた。
主な結果は以下の通り。

再評価尺度
・私的自意識と有意な正の相関。
罰尺度
・PSWQと有意な正の相関,Pauda Inventoryの思考の制御困難感と有意な正の相関。
・特性不安,神経症傾向,公的自意識と有意な正の相関。
心配尺度
・PSWQと有意な正の相関,Pauda Inventoryの思考の制御困難感とも有意な正の相関。
・特性不安,神経症傾向と有意な正の相関を示した。
今後は,このTCQを使った研究を紹介していきます。
お楽しみに!!


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