強迫性障害のクライエントさんに手元においてもらって,
行動療法に取り組むときに活用していただく本というのは
いくつかあります。
今日ご紹介する本は,見かけは薄いけれど,中身はしっかり詰まってます。
強迫性障害の治療ガイド 飯倉 康郎 二瓶社
強迫性障害の曝露-反応妨害法に取り組むために,
クライエントさんとセラピストとが一緒に使っていく本です。
いつも活用させていただいています。
どこで役立つのか,今日はその前編です。
セラピストとして助かるのは,強迫症状が悪循環に陥る過程を
描写した図です。セラピーの経過を通して役に立ちます。
��強迫性障害の曝露-反応妨害法に興味をお持ちの方には,
ぜひ実物を見ていただきたいです)
同じような図が,九大精神科行動療法研究室のHP,
「【3】強迫観念と強迫行為のしくみ その2」
にも掲載されています。
どのように役立っているかと言えば。
まず,心理教育で役立ってます。
あの図を示して強迫性障害の仕組みを説明するとき,
クライエントさんの反応を見ていると,
「ある,ある」と首を縦に振ってくれることがしばしば。
クライエントさんの体験を内側からピタッととらえているからでしょう。
��そして,この「ある,ある」自体,イエスセットを導くことになっていて,
後の曝露-反応妨害法に取り組むことを容易にしているのでは,
などと思ってみたり)
次に,行動分析で役立ってます。
二人で一緒に図に書き込んでいくと,何に曝露し,どのような行為を
控え ればよいのかが見えてくるからです。
症状に関するクライエントさんの説明がはっきりしないことがあります。
たとえば,「洗い物がストレスで…」と繰り返し言われる場合。
こういうときには,「どれが強迫観念で,何が強迫行為か,まだうまくつかめて
いないのかもな」,と考えるようにしています。
��いくつもの症状に振り回されていっぱいいっぱいの生活をしていたら,
そうなるのも無理はないと思います。クライエントさんは悪くないです)
それがつかめるようにして差し上げるのがセラピストの務め。
そこで,この図に戻って,二人で一緒に一つずつ整理していくと,
図が描きあがったときには,
「洗い物をして,洗剤をすすいだ後に,まだ洗剤が残っている気がして,
かごに入れた食器をもう一度取り出して洗ってしまう」
といったことが見えてきます。
ここで,クライエントさんは, 自分が何を恐れ,何をしてしまっているのかが
「腑に落ちた」という 反応をされます。
ここまできたら,何に曝露し,どのような行為を控えればよいのかは
ほぼ見えてきています。
この本の後半については,後編で取り上げます。
なお,強迫性障害に悩まれる方がこの本を見ながらお一人で
曝露-反応妨害法に取り組まれるよりも,
強迫性障害の行動療法のトレーニングをきちんと経た医師や心理士と
一緒にこの本を使っていかれることをお勧めします。
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