Joormann, J., Siemer, M., & Gotlib, I. H. (2007). Mood regulation in
depression: Differential effects of distraction and recall of happy
memories on sad mood. Journal of Abnormal Psychology, 116, 484-490.
最新,というほどではないけれど,最近の研究。
大うつ病性障害の発症と維持とに,ネガティブな情動や気分を制御する能力の
障害が関わっている,という論がある。
つまり,うつ病エピソードを経験する人は,そうでない人と比べて,抑うつ気分の
程度にはちがいがないが,それを制御する能力が損なわれている,という考え方。
関係がありそうな気分制御プロセスは次の2つ。
①気分不一致検索:ネガティブな気分がポジティブな記憶材料へのアクセシビリティー
を高める。人はそれを使って抑うつ気分を制御する。
②気晴らし:認知的資源を他のことに十分に振り分けて,気分に関係した思考に
注目するのを止める。
方法
協力者:以下の3群。
・健常群(うつ病になったことがない),
・うつ病寛解群(以前うつ病になったことがあるが,現在はうつ病ではない)
⇒うつ病患者が示す気分制御の問題が,うつ病症状のひとつ(=状態)なのか,
脆弱性を持つ人たちの持続的な性質(=特性)なのかを調べるため。
・うつ病群(今現在,うつ病)。
測度:気分の評定と,BDI-Ⅱ。
気分誘導:健常群とうつ病寛解群には,悲しい映画を見せて抑うつ気分を誘導。
課題
各群の協力者は以下のどちらかの課題に取り組んだ。
・気晴らし条件:単語を使ったパズルゲーム。
・ポジティブな記憶想起条件:高校時代のポジティブな出来事を思い出してもらう。
なお,想起されたポジティブな記憶の数や,独立な評定者による記憶のポジティブさ
の評定では,3群に違いはなかった。
結果と考察
健常群:気晴らし条件でも,ポジティブな記憶想起条件でも,抑うつ気分は改善された。
うつ病寛解群:気晴らし条件では抑うつ気分が改善された。
しかし,ポジティブな記憶想起条件では,抑うつ気分に変化はなかった。
うつ病群:気晴らし条件では抑うつ気分が改善された。
一方,ポジティブな記憶想起条件では,抑うつ気分が悪化した。
結論:うつ病の人は,ポジティブな記憶を想起することはできるが,
それを使って気分を制御する能力に障害がある。
この障害は,うつ病が寛解しても続くよう。
想起されたポジティブな記憶が気分に及ぼす影響は,うつ病(歴)があるかないかで
違っている可能性がある。
うつ病の方に気晴らしを促すときには,頭の外の何かに注意を向けてもらうのがよさそう。
2 件のコメント:
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昨日はおつかれさまでした。( ^^) _旦~~ さっそくブログを見させていただきました。とてもためになります (*゚ー゚*) でも、高校時代の楽しい思い出って、へこんでる時に思い出すと、あ~あの時は良かったな、それに比べて今は はあ~~( ´Д` ) ってなりません? 最近楽しかったことを想起するとか、楽しみにしてることを想起したほうがいいような… なんて思っちゃいました。
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昨日はとっても楽しい時間をありがとうございました。
そして,感想もありがとうございます!!
>でも、高校時代の楽しい思い出って、へこんでる時に思い出すと、あ~あの時は良かったな、>それに比べて今は はあ~~( ´Д` ) ってなりません?
同感です。
>最近楽しかったことを想起するとか、楽しみにしてることを想起したほうがいいような… な>んて思っちゃいました。
思いつかなかったです。素敵なアイディア,ありがとうございます!!
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