TCQを開発したWells & Davies(1994)の研究で,協力者は健常群でした。
今日ご紹介するのは,「臨床群ではどうなんだろう」という関心のもとに
行われた,初期の研究です。
Reynolds, M., & Wells, A. (1999). The Thought Control Questionnaire:
Psychometric properties in a clinical sample, and relationships with
PTSD and depression. Psychological Medicine, 29, 1089-1099.
この研究の目的
①臨床群で,TCQの因子構造,信頼性,妥当性を検証すること。
②治療による回復に対するTCQの感度を調べること。
協力者:DSM-ⅣのPTSD診断基準を満たす群(うつ病のある方もない方も)と,
うつ病診断基準を満たす群の外来患者と入院患者,計124名。
回復の基準:上記の診断基準を満たさなくなること。
測度
PSSI(PTSDの症状:再体験,回避,過覚醒の3カテゴリー)
BDI,
IES(トラウマ的な出来事に関する記憶の侵入と回避)
HAD(不安と抑うつ)
TCQの因子分析の結果
6因子解。「気晴らし」以外の因子はWells & Davies(1994)とほぼ同様。
気晴らし因子が「認知的気晴らし(e.g., 楽しいイメージを思い浮かべる)」と
「行動的気晴らし(e.g., 仕事をして忙しくしておく)」に相当する
2因子に分かれた。行動的気晴らしの方が2項目となって,信頼性が低い。
⇒Wells & Davies(1994)で得られた5因子として集計。
信頼性(内的整合性)αs≧.65で,Wells & Davies(1994)と同等。
群間差
うつ病群に比べて,PTSD群の方が,気晴らし尺度の得点が有意に高かった。
TCQと,PTSD症状および抑うつ症状との相関
PTSD群では,
社会的コントロール尺度とIES回避尺度とが負の相関。
気晴らしとBDI,HAD不安尺度とが負の相関。
うつ病群では,
再評価尺度,気晴らし尺度がBDIと負の相関。
罰尺度がBDIと正の相関。
気晴らし尺度がHAD抑うつ尺度と負の相関。
罰尺度がHAD抑うつ尺度と正の相関。
心配尺度,罰尺度がHAD不安尺度と正の相関。
再評価尺度がIES侵入尺度と負の相関。
罰尺度がIES侵入尺度と正の相関。
社会的コントロール尺度がIES回避尺度と負の相関。
目的②「治療による回復に対するTCQの感度を調べること」に
関する結果は,また後日…。
Psychological Medicineは,文字通り,(精神)医学系の心理のジャーナル。
面白い研究が載ってたりします。
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