2010年8月23日月曜日

うつ病を伴う強迫性障害におけるセラピーの方針

以前書いた記事の補足です。

うつ病と強迫性障害とがcomorbidしている場合,どっちから取り組むか,
注意が必要です。

ちなみに,うつ病から強迫症状が派生した場合と,強迫性障害からうつ病が
生じる場合という,2つの場合があり得ます。


うつ病から派生した強迫症状の場合。
確認強迫を例にして説明しますと,
「私は頭が悪いので,書き間違いをしているのではないかと思って…」と,
確認する理由に,自分(の能力)を卑下する雰囲気が混じります。
これに対して,うつ病から派生したのではない,通常の強迫性障害の場合だと,
確認をする理由は,他者への迷惑を危惧することです。
「もしも書き間違いをしていたら,会社に大損害を与えるので…」。
もちろん,うつ病の場合でも,こうした迷惑の雰囲気があることも
あるのですが…。
強迫症状がうつ病から派生したものである場合,うつ病が治れば,
それに伴い強迫症状もよくなります。だから,まずはうつ病のセラピーを行います。

一方,強迫性障害から派生したうつ病の場合,
OCDが悪化していくと,症状に圧迫されて生活が不便になっていきます。
例えば,外出しづらくなったり,仕事辞めないといけなかったり。
それに伴ってうつ病になっていかれます。

この場合も,最初に行うのはうつ病のセラピー。
その理由は,理論的な観点と,実際上の観点と,二つあります。

まず,理論的な観点。
抑うつ気分を伴ったままでは,不安喚起刺激に対して曝露をしても馴化が起きない。
これについてFoaがemotionalprocessing of fearという論文で理論化しています。
この論文はまた紹介したいと思います。

そして,実際上の観点。
曝露-反応妨害法は,ある程度まとまった期間,患者さんの頑張りが必要。
患者さん自身に効果が実感できるまで,ちゃんとやっても2-3ヶ月かかります。
しかし,うつ病でエネルギーがないと,これは続けられません。

病歴を取る場合には,うつ病が先か,強迫症状が先かを見極めることが重要。
私は,「何回も確認するようになったのと,気分が落ち込んで何もする気が
なくなったのと,どっちが先でしたか?」と,必ず尋ねるようにしています。

以上,うつ病と強迫性障害がcomorbidしている場合には,まずうつ病に取り組むのが定石。
それで,うつ病が治った後に強迫症状が残っていたら,それにたいしては曝露-反応妨害法を。
と私は習いました。


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