2010年9月8日水曜日
I am pleased to inform you だそうです。
その後,気持ちを切り替え,ジャーナルを変えて再投稿をしました。
そして,先日,その査読の結果が届きました。
今回は,楽しい昼ご飯を食べようとしているときでした。
予想より早かったので,ひょっとしてまたも忌まわしき言葉を
目にしなくてはならないのでは,などと弱気になったのですが。
I am pleased to inform you …と書いてあったのを見て救われました。
「適切な改訂を行ったら受理します」といった旨のことが書かれていました。
今は,嬉しいというより,ほっとしたという感じです。
査読者のお二人,いろいろ言ってきてます。
もちろん,きっちり直していきますよ。
「改訂した原稿を投稿しても,また査読があるので,受理を保証する
ものではありません」みたいな断り書きがしっかりしてあります。
ここでしくじったら元も子もない。
しっかし,明るい気分で改稿に取り掛かれるのはいい。
今年(今年度?)の前半は思うに任せないことがいろいろあって,
正直苦しかったのですが,腐らずにやってきてよかった。
この論文に関わって,バックアップしてくださった皆さんに感謝申し上げます。
それから,同じ時期に,近いテーマで,類似のジャーナルに投稿してこられた
先生方にも感謝したい。皆さん一筋縄ではいかない様子だったけれど,
タフに取り組んでおられる様子から,私も励まされました。
受理になる先生も出てきたようなので,私も後に続きたいものです。
そしてやっぱり,一番感謝したいのは,うちの相方です。
苦しい時にしっかり叱咤激励してくれたし,今回も喜んでくれました。
おかげで私も少しはタフになったと思う。
英文誌はどこもcompetitiveなんだと思います。
「投稿されてくる論文の数があまりに多いから,なるべく落としてほしい」
という要望が編集委員会から査読者にあるのではないだろうか。
そういった状況で論文を受理に持っていくためには,手堅くまとめられている
だけでなく,何かひとつ,光るものが必要だということを学びました。
いつも目線を高く持たないとね。
他にも,投稿したい原稿がいくつか手元にある。勢いに乗って出していこう。
2010年8月23日月曜日
うつ病を伴う強迫性障害におけるセラピーの方針
うつ病と強迫性障害とがcomorbidしている場合,どっちから取り組むか,
注意が必要です。
ちなみに,うつ病から強迫症状が派生した場合と,強迫性障害からうつ病が
生じる場合という,2つの場合があり得ます。
うつ病から派生した強迫症状の場合。
確認強迫を例にして説明しますと,
「私は頭が悪いので,書き間違いをしているのではないかと思って…」と,
確認する理由に,自分(の能力)を卑下する雰囲気が混じります。
これに対して,うつ病から派生したのではない,通常の強迫性障害の場合だと,
確認をする理由は,他者への迷惑を危惧することです。
「もしも書き間違いをしていたら,会社に大損害を与えるので…」。
もちろん,うつ病の場合でも,こうした迷惑の雰囲気があることも
あるのですが…。
強迫症状がうつ病から派生したものである場合,うつ病が治れば,
それに伴い強迫症状もよくなります。だから,まずはうつ病のセラピーを行います。
一方,強迫性障害から派生したうつ病の場合,
OCDが悪化していくと,症状に圧迫されて生活が不便になっていきます。
例えば,外出しづらくなったり,仕事辞めないといけなかったり。
それに伴ってうつ病になっていかれます。
この場合も,最初に行うのはうつ病のセラピー。
その理由は,理論的な観点と,実際上の観点と,二つあります。
まず,理論的な観点。
抑うつ気分を伴ったままでは,不安喚起刺激に対して曝露をしても馴化が起きない。
これについてFoaがemotionalprocessing of fearという論文で理論化しています。
この論文はまた紹介したいと思います。
そして,実際上の観点。
曝露-反応妨害法は,ある程度まとまった期間,患者さんの頑張りが必要。
患者さん自身に効果が実感できるまで,ちゃんとやっても2-3ヶ月かかります。
しかし,うつ病でエネルギーがないと,これは続けられません。
病歴を取る場合には,うつ病が先か,強迫症状が先かを見極めることが重要。
私は,「何回も確認するようになったのと,気分が落ち込んで何もする気が
なくなったのと,どっちが先でしたか?」と,必ず尋ねるようにしています。
以上,うつ病と強迫性障害がcomorbidしている場合には,まずうつ病に取り組むのが定石。
それで,うつ病が治った後に強迫症状が残っていたら,それにたいしては曝露-反応妨害法を。
と私は習いました。
2010年8月22日日曜日
うつ病群を対象にしたThought Control Questionnaire(TCQ)の最近の研究
Relnolds & Wells(1999)以来ほとんど目にしたことがなかったのですが,
最近になってひとつ出ました。
Watkins, E. R., Moulds, M. L.(2009). Thought control strategies,
thought suppression, and rumination in depression. International
Journal of Cognitive Therapy, 2, 235-251.
彼らは,大うつ病性障害の患者群,大うつ病性障害から寛解した群(=かつて
大うつ病性障害だったけれど現在はそうではない),健常群(うつ病になった
ことがない)の3群で研究を行いました。
まず,3群を混みにして,TCQの5つの下位尺度の得点とBDIとの相関を
調べたところ,以下の結果が得られました。
・罰方略,心配方略がBDIと正の相関を示した。
・社会的コントロール方略,気晴らし方略がBDIと負の相関を示した。
次に,3群で,TCQの5つの下位尺度の得点を比較したところ,以下の結果が
得られました。
・心配方略の得点は,大うつ病性障害から寛解した群,健常群に比べて,
大うつ病性障害の患者群で有意に高い。
・罰尺度で,大うつ病性障害の患者群,大うつ病性障害から寛解した群,健常群
の3群で有意差が見られ,この順に得点が高かった。
こういうremitted patientの研究って,障害が治るのに伴ってどのような特徴が
消えていき,障害が治ってもどのような特徴は残存するのかを示唆してくれます。
うつ病が再発を繰り返すことを考えると,症状が消えても残存する特徴が
リスクファクターになってる可能性もあるんじゃないだろうか。
この,International Journal of Cognitive Therapy,最近立ち上がった
ジャーナルみたいです。
2010年8月21日土曜日
精神科の患者におけるThought Control Questionnaire(前編)
今日ご紹介するのは,「臨床群ではどうなんだろう」という関心のもとに
行われた,初期の研究です。
2010年7月28日水曜日
マインドフルネスの尺度あれこれ,その名称と書誌情報
その名称と書誌情報とを紹介しておきます。
・Mindful Attention Awareness Scale(MAAS)
Brown, K. W., & Ryan, R. M. (2003). The benefits of being present:
Mindfulness and its role in psychological well-being. Journal of
Personality and Social Psychology, 84(4), 822-848.
www.ppc.sas.upenn.edu/mindfulnessscale.pdf
で,英語版の実物を見ることができます。
・Kentucky Inventory of Mindfulness Skills(KIMS)
Baer, R. a., Smith, G. T., & Allen, K. B. (2004). Assessment of
mindfulness by self-report: the Kentucky inventory of mindfulness skills.
Assessment, 11(3), 191-206.
・Toronto Mindfulness Scale(TMS)
Lau, M. A., Bishop, S. R., Buis, T., Anderson, N. D., Carlson, L.,
Carmody, J., et al. (2006). The Toronto Mindfulness Scale : Development
and Validation. Online, 62(12), 1445-1467.
・Cognitive and Affective Mindfulness Scale-Revised (CAMS-R)
Feldman, G., Hayes, A., Kumar, S., Greeson, J., & Laurenceau, J. (2006).
Mindfulness and Emotion Regulation: The Development and Initial
Validation of the Cognitive and Affective Mindfulness Scale-Revised
(CAMS-R). Journal of Psychopathology and Behavioral Assessment, 29(3),
177-190.
・Freiburg Mindfulness Inventory(FMI)
Walach, H., Buchheld, N., Buttenmuller, V., Kleinknecht, N., & Schmidt,
S. (2006). Measuring mindfulness: the Freiburg Mindfulness Inventory
(FMI). Personality and Individual Differences, 40(8), 1543-1555.
2010年7月23日金曜日
介入研究の協力者をどうやって募集するか?
という話題になりました。
大学で研究をやってる場合,学内に張り紙を出したりすれば,
学生さんが集まってきます。
現に,うちのラボの知覚系や認知系の人たちは,
そのようにして協力者を募っています。
では,学生でなく,一般の方を協力者として募集したいときにはどうするか。
タウン誌やHPで募集するという方法が考えられます。
確かに,Baby Scienceというか,赤ちゃんを対象にして
いろいろな実験をやる人たちは,タウン誌に広告を出したり,
研究室のホームページでも広報をされています。
実際,それが功を奏して,協力者の赤ちゃん(というか,実質はお母さん)
が,それなりの数,集まったりします。
私の知り合いも,かつてそのようにして研究をしていました。
ここで気になるのは,これと同じことが,臨床心理などの介入研究でも
できるのだろうか,ということ。
赤ちゃんを協力者にした研究だと,なんだか微笑ましいというか,
楽しそうな気がするものだし,どんなことが分かるのか,
ワクワク感があるので,広告やホームページを見たお母さんたちが
応募してくださるのだろう,と勝手に想像しています。
だけど,臨床心理などの介入研究は,こういう印象を持たれにくい
だろうから,応募してくださる方の数は少なくなるのではないかな。
さらに,臨床心理っぽい介入研究の協力者になることに関心を
持ってくださる方というのは,一般の方とは大きく異なる,
特別な層に属している気がします。
いわゆる,サンプリングバイアスの問題です。
だから,知見を一般化するのに慎重になる必要があるのかもしれない。
などと,「できない理由」を書き連ねてはいけませんね。
介入研究をやろうとされる心意気,素晴らしいと思います。
いろんな制約や問題がある中で,少しでも良質の研究をするのに,
どのような手立てをしていったらいいのか,と考えなくては。
それにしても,今の私には実体験もアイディアもありません…。
この記事をお読みの方の中で,「一般の方を対象にした介入研究で,
協力者を募集するときに自分(たち)はこのようにしましたよ」
といった体験談やノウハウをお持ちの方がいらっしゃったら,
ぜひぜひアブスト屋までお知らせください。
2010年7月14日水曜日
マインドフルネスの尺度あれこれ
マインドフルネスを測定する尺度が必要になりますよね。
じゃあ,既にどんな尺度があるんだろう?
杉浦 義典 (2009) アナログ研究の方法 新曜社
の,「マインドフルネスをめぐる多様な測定尺度」(pp.168-173)で,
2003年から2008年までに発表されたマインドフルネスのさまざまな尺度が
紹介されています。表5-2がとっても分かりやすい。
「確かに,その時期,日本心理学会の大会に行くと,マインドフルネス関係の
尺度を開発しているポスター発表がいくつかあったなあ」とか,
「これらの尺度の日本語版は出ていないのだろうか?」とか思ってみたり。
慢性疼痛に特化したものではなく,対象者は一般人口,寛解中のうつ病患者,
境界性人格障害などです。しかし,慢性疼痛でも適用可能かもしれない。
個人的には,「観察」の因子(自分の体験に注意を向けること)が,
瞑想を体験したことがない人では心理的症状と正の相関を示すが,
瞑想の訓練を経た人では負の相関が見られることが興味深かった。
瞑想を体験したことがない人と,瞑想の訓練を経た人とで,
「観察」の因子から心理的症状へ引いたパス係数の符号が異なるのかを,
同時多母集団解析で調べたらどうなるんだろう?